展示会のモニターで流す動画は、音が聞こえない前提で作ります。押さえたい点は3つです。途中から見ても何の会社か分かること、通路から読める大きさの文字にすること、最後の画面から最初の画面へ切れ目なくつなぐこと。文字の大きさは、1920×1080の動画を43型のモニターで4〜5m先から見るなら40px(約2cm)以上、余裕を見て50px前後が目安です。初めて展示会に出る会社の担当者の方に向けて、架空の町工場の30秒サンプルを例に、文字の大きさの決め方、会場での確認、準備の順番、費用の目安をまとめます。
会場では、音がほとんど届かない前提で作る
展示会の会場は、隣のブースの説明やアナウンス、話し声でにぎやかで、BGMやナレーションは周りの音にまぎれがちです。来場者も、動画を最初から見てはくれません。通路を歩きながら、たまたま目に入った場面から見はじめます。そのため、会場で流す動画は次の3つを満たすように作ります。
- 途中から見ても分かるどの場面にも、社名か要点のどちらかが入っている。
- 離れても読める遠くから読ませたい文字は、通路から読める大きさにする。
- つなぎ目が目立たない最後の画面から最初の画面へ、自然につながる。
1周は15〜30秒にしておくと、少し立ち止まった人にも、最後の連絡先まで見てもらいやすくなります。
サンプルで見る、30秒のループ動画の場面ごとの工夫
下の動画は、東京・大田区の町工場「ミナトリ精工」を想定した自主制作サンプルです。会社は架空で、設備や数値もサンプルです。音なしで繰り返し流す前提で作りました。
時間を押すと、その場面から再生します。
- 何の会社か「試作・小ロットの切削加工」「東京・大田区」と社名。最初の2秒で、何の会社でどこにあるかが分かります。
- 区切りのひと言大きな「削る。」で区切ります。音がなくても、文字の大きさの変化で場面の変わり目が分かります。
- 仕事の中身加工の映像を次々に切り替え、テロップ「図面1枚から精密部品を削る」は同じ位置に止めたままにします。
- 強みを数字で「1000」から減っていく数字が「1個から」で止まります。「小ロット対応」と書くより、遠くから読めます。
- 精度も数字で測定の映像のあと、加工公差「±0.01mm」を画面いっぱいの数字で見せます。
- 検査測定の写真に「加工後は寸法を測定し、図面通りに検品します」と、赤い「検」の印を重ねます。
- 対応範囲材質・サイズ・設備・数量・図面の形式を、1行ずつ表に加えます。発注を考える人が確かめたい条件を、ひと目で確かめられるようにしました。
- 誰が相談を受けるか「図面や加工方法のご相談は代表が直接お受けします」を、縦書きで1文字ずつ。ここだけゆっくり見せて、全体に緩急をつけます。
- 納期「試作は最短3日で出荷」。数字の「3」だけを赤にしています。
- 連絡先社名・電話番号・QRコードを約3秒止めて見せ、最後の0.5秒で黒へ。そのまま最初の黒い画面につながります。
文字の大きさは「何メートル先から読ませるか」で決める
目安になるのが、駅などの案内サインの基準です。国土交通省の資料では、それぞれの距離から読み取るために通常有効な文字の大きさ(和文)を、次のように示しています。
| 見る距離 | 和文の文字の高さ |
|---|---|
| 1〜2m | 9mm以上 |
| 4〜5m | 20mm以上 |
| 10m | 40mm以上 |
| 20m | 80mm以上 |
出典:国土交通省「ガイドライン『参考』の主な修正」(資料4)の参考2-2-3「文字の大きさの選択の目安」から抜粋。駅などの旅客施設の案内サイン向けに示された目安です。
これをフルHD(1920×1080)の画面に当てはめると、次のとおりです。
| モニターの大きさ | 4〜5m先から読む(20mm) | 10m先から読む(40mm) |
|---|---|---|
| 32型 | 54px | 108px |
| 43型 | 40px | 81px |
| 50型 | 35px | 69px |
| 55型 | 32px | 63px |
画面の高さ(43型で約54cm)を1080で割った1pxの長さから計算しています。フォントのpxは文字の枠の大きさで、見える字は少し小さくなるため、表より1〜2割大きくしておくと安心です。
サンプルでは、遠くから読ませたい大きな数字を300〜760px、業種やテロップを56〜112px、電話番号を130pxにしています。所在地や表の項目名は40〜52px、注記は30pxで、近づいた人が読む情報です。大事なことほど大きくすると、どれが要点かが遠くからでも伝わります。
カットの長さと、つなぎ目の作り方
サンプルは30秒で画面が19回切り替わり、いちばん長いカットでも約3.5秒です。止まった画面が続くと、遠目には静止画のパネルと区別がつきにくいためです。一方で、文字は出たあと位置を動かしません。文字まで動くと、読み終わる前に目で追いきれなくなります。
ループのつなぎ目
繰り返し再生すると、最後の画面から最初の画面へ一瞬で切り替わります。サンプルは最初を黒い画面にし、最後の0.5秒で連絡先の画面を黒へフェードアウトさせて、同じ黒でつないでいます。連絡先の画面を約3秒止めるのは、QRコードを読み取る時間を取るためです。間に合わなかった人も、次の周で読み取れます。
会場で流す前に確かめること
搬入の前に、実際に使う機器(テレビにUSBメモリを挿す、パソコンをつなぐ、専用の再生機器など)で次の点を試しておくと安心です。
- 同じ動画を繰り返し再生(リピート)できるか
- 電源を入れ直したあと、どう操作すれば再生が始まるか
- 画面の端が切れていないか(テレビの設定によっては周りが少し切れるので、文字やQRコードは端に寄せすぎない)
- パソコンの場合、スリープや通知で動画が止まったり隠れたりしないか
- モニターを縦に置く場合、縦型(1080×1920)の動画が正しい向きで映るか。縦向きの表示に対応していないテレビには、90度回した横長のファイル(1920×1080)もお作りできます
音を出す場合は、主催者の出展マニュアルで音量の決まりを確認してください。たとえばCEATECの出展マニュアルでは、ブースの境界線から2mの場所で測った音量(ピーク値)を80dB以下とし、音量について近隣の出展者と事前に話し合い、確認するよう求めています。音楽を流すなら、その曲を会場で使ってよいか(著作権)も確かめてください。当方の動画に入れるBGMは、商用利用できる音源です。
ご依頼の前に用意するもの
次のものがそろっていると、構成案をすぐにお作りできます。すべてそろっていなくても大丈夫です。
- 何の会社かを表す一言(例:試作・小ロットの切削加工)と所在地
- 強みを表す数字を1〜3個(数量・精度・納期など)
- 発注を考える人が確かめたい条件(材質・サイズ・設備など)
- 写真や映像を10点前後(人物が写るものは、掲載の了承を得た方のみ)
- ロゴのデータ(なければ社名を文字でお入れします)
- 電話番号と、QRコードにするホームページのURL
- モニターの大きさと向き(横・縦)、再生方法、通路からモニターまでの距離
- 外国語版が必要かどうか
写真が少ない場合は、素材映像や生成画像で補えます。サンプルも、加工の場面は素材映像、人物と検品の写真は生成画像です。
会期から逆算した準備の順番
当方にご依頼いただく場合の目安です。納期は素材がそろってから約2週間なので、会期の4週間前にご相談いただくと、会場で使う機器で試す時間まで取れます。
| いつ | やること |
|---|---|
| 会期の4週間前 | ご相談・お見積り。上のチェックリストの素材を集めはじめる |
| 3週間前まで | 素材をそろえ、構成案(場面・秒数・テロップの文言)を決める |
| 2週間前ごろ | 静止画ラフと、動画の初稿を確認する |
| 1〜2週間前 | 修正(2回まで) |
| 1週間前まで | 納品。会場で使う機器で再生を試す |
| 搬入日 | モニターを置いたら、通路に立って文字が読めるか、QRコードを読み取れるかを確かめる |
会期まで4週間を切っている場合は、お急ぎ(素材がそろい構成案が確定してから7日以内に納品、+12,000円)もご用意しています。
費用の目安と、比べるときの注意
動画の制作費は、撮影の有無、長さ、依頼先で大きく変わります。公開されている調査や記事から、目安を並べます。
| 依頼先・内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 動画制作会社(動画全般) | 20万〜300万円以上 |
| 商品・サービスのPR動画(1本) | 約47万円 (中央値28万円) |
| フリーランス(動画全般) | 5万〜50万円 |
| 展示会の案内動画:撮影を含む(30秒〜1分) | 10万〜30万円 |
| 展示会の案内動画:テロップ中心・手持ちの素材を使う(15〜30秒) | 3万〜10万円 |
出典:動画制作の費用相場をまとめた公開記事2本(2026年6月・9月更新)。上の3行は、過去5年分の実際の見積書をもとにした数値です。どちらも内容によって幅があります。
当方(yuon制作室)の料金は、次のとおりです。
| 30秒までの動画1本 | 15,000円実績づくり価格。制作実績として掲載させていただける方・先着3名さま・2026年12月31日受付分まで |
|---|---|
| 掲載が難しい場合と受付終了後 | 28,000円30秒まで |
| 含まれるもの | 構成案・主な場面の静止画ラフ・テロップ・BGM・修正2回まで横型か縦型の1サイズをMP4で納品 |
| 外国語版 | 1言語につき+10,000円 |
| 縦型・横型の両方 | +8,000円 |
| 納期の目安 | 素材がそろってから約2週間 |
表示価格がお支払いの総額です。適格請求書(インボイス)は発行できません。
撮影には伺わず、お送りいただいた写真・資料と素材映像で作るので、上の表の「テロップ中心・手持ちの素材を使う」動画と同じ種類です。工場や会場での撮影が必要な場合は、撮影に対応している制作会社やフリーランスへの依頼が向いています。見積りを比べるときは、金額に加えて「長さ」「撮影の有無」「修正の回数」「縦型・横型の両方が含まれるか」「外国語版の費用」をそろえて見てください。サンプルと料金の詳細は、展示会・店頭で流す動画のページにまとめています。
よくある失敗3つ
1. 会社案内の動画を、そのまま流す
ナレーションで説明する動画は、音がないと伝わりません。字幕を足すだけでは文字が小さく、量も多くなりがちです。場面ごとに一言で言い切る文字を中心に作り直すほうが確実です。
2. パソコンの画面で文字の大きさを決める
手元で読める文字も、数メートル離れると読めません。完成前に、使うモニター(または同じくらいの大きさのテレビ)に映して、来場者が立つ距離から確かめてください。
3. 連絡先がない、または一瞬で消える
最後に社名・電話番号・QRコードを数秒止めて見せると、ブースの担当者が接客中で手が離せないときにも、連絡の入口になります。
まとめ
- 会場の動画は音が届かない前提で、文字と映像だけで意味が通るように作る
- 文字の大きさは、モニターの大きさと見る距離から決める(43型を4〜5m先から見るなら40px以上、余裕を見て50px前後)
- 連絡先の画面は数秒止め、最後と最初の画面を同じ明るさでつなぐ
- ご依頼の場合は会期の4週間前に準備を始め、会場で使う機器で繰り返し再生を試しておく
- 音なしで伝わる動画は、展示会のあともホームページや営業先のタブレットで使える(SNS用の縦型の版もお作りできます)